日本語スキル要件と人材獲得競争|インドエンジニア採用FAQ

インドエンジニアの採用の話題となると、日本語はできるのか?という質問を多くいただきます。結論から申し上げますと、日本語はできません。しかし問題はありません。

縮小を続ける日本の人材市場・経済市場で生き残るためには、高いエンジニアスキルを持つ人材を日本人スタッフと対等な条件で広く世界中から募ることが絶対に必要であり、そして日本にはその競争に勝てるポテンシャルがあります。

今回は、その整合性について解説していきます。

ハイレベルエンジニアをどう確保するか。

そもそも論なのですが、高いエンジニアスキルを持つ人材というのは世界的に見て非常に希少です。なぜなら、一定レベル以上のスキルというのはスクーリングや座学といった手法での育成ができず、仕事を通じた試行錯誤やメンバーとの切磋琢磨の環境で磨かれるものだからです。

反面、日本語スキルや日本サバイバルスキルというのはスクーリングや座学といった手法で効率的に育成が可能です。

ここはコストの判断が必要になる場所ですが、「高いエンジニアスキル&日本語」という何でも可能なスーパーマンを採用するために必要なコストよりも、「高いエンジニアスキル」を持つ人材を広く世界から募ることの方がコスト的に有利でしょう。

外国で就職活動をする場合「Japanese Native」というスキルは履歴書に記入できるスキルであり、非常にレアリティが高く有益なスキルです。

不足しているのはどのレベル帯のエンジニアか?

日本ではエントリーレベルからハイレベルまで全てのレベル帯のエンジニアが不足しています。

それでは、現在の自社で必要なエンジニアはどのレベル帯のエンジニアでしょうか。

もし、エントリーレベルのエンジニアが不足しているのならば、エンジニアをハンティング(狩猟)してくる以外にも、非エンジニアを育成(農耕)するという戦略が可能です。

日本は人手不足と言われていますが、それは嘘で人間自体は沢山います。例えば、現在注目されている人材プールに「夜の仕事をしている女性」というプールがあります。一説には、このプールに従事している人材は推計で60万人、また毎年10万人が入れ替わっていると言われています。新卒のプールが約50万人なので、相当に大きなプールです。

他にも高卒者プールは大学進学率は約50%なので、新卒者と同程度の人材プールが存在します。

エントリーレベルのエンジニアが不足しているというならば、例えばこういった人材セグメントに対してアプローチをし、人材を育成するという戦略が可能です。

企業は一般的に即戦力人材を求めます。しかし、人事界隈でよく言われることですが、「どこの会社も欲しがる即戦力人材を採用するならば自社が選ばれる10個以上の客観的な理由」が必要になります。

戦略それ自体に良いも悪いもありません。大切なのは戦略を実行する際のコストメリットです。

エントリーレベルエンジニアを海外から呼ぶメリットは無い

都会にある情報系の企業ですとあまり当てはまらないのですが、日本の企業がよく持っている誤解に「外国人は安い」という誤解があります。

距離的なコストがある以上、外国人は安い労働力にはなりません。では、技能実習生を最低賃金以下で働かせている農場はどうなんだ?という反論があるかと思います。

もちろん、そもそも違法なので比べる対象ではないのですが、いわゆるノンスキルの人でも可能な仕事は機械化したほうがコストメリットがあります。人間よりも機械の方が確実に安いです。

成功している技能実習の場は、そこに「学び」「仕事を通じた成長」があるケースであり、単なる安い労働力としての技能実習ビジネスは成功していません。

これはエンジニアリングの世界にも言えることで、完璧な仕様書を作ることができるならば世界最安値の企業にオフショアする方が安いですし、仕様書通りに作成するプロダクトはそれほど遠くない未来にAIによる機械化がなされます。エントリーレベルエンジニアであっても、いつまでもエントリーレベルであっては機械に淘汰されるため、仕様書を作るレベルまではスキルアップする、又はハイブリットなスキルを身に着けるなどの成長をする必要があります。

インドやパキスタン、バングラディシュは英語なので、アメリカやイギリスの企業への就職に語学的なハードルはありません。しかし、欧米の企業がわざわざ呼んで採用する人材というのは年収ベースで700万円程度以上のエンジニアです。

エンジニアの給与はスキルとの相関が高いので、それ以下の給与帯のエンジニアをわざわざ呼ぶことにはコストメリットが無いということでしょう。

実際にアメリカの企業のマニュアル通りの回答を求められるコールセンターはインドに多く存在します。地理的なコストがある以上、エントリーレベルの外国人を招聘するコストメリットはありません。

留学生採用との違い

このように書くと、留学生ならば既に日本にいるので日本語もできるし、(出身国との経済格差があるので)給与も安くて済む。という意見があります。

しかし、これも事実と異なります。実際のところ、例えば中国の一流企業は実力がある人材ならば日本企業以上の報酬を普通に提示します。現在では実力と給与の国ごとの際は殆ど無くなっており、実力のある人材ならば、実力相応の給与をどこの国でも得ることができます。

国際線のパイロットの給与が昔からどこの国でも大体同じだったように、経済の流動性が進んだ現在では経済格差を利用した人材貿易というのは経済の原則に逆らっているため不可能です。

給与は国籍に依らず、その人の実力に比例して必要となります。

また、人間の学習リソースは有限ですので「エンジニアスキル+日本語力」と「エンジニアスキル」の人ならば、当然、日本語が可能な人のほうが給与は高くなります。さらに、そもそもの絶対数が少ないという問題があります。留学生という人材プールは決して多くはありません。

経済格差を利用した人材貿易が原理的にできない以上、どこの国の出身者であっても「競合他社ではなく、自社が選ばれる理由」が必要です。

営業力で何とかすることはできない。

中学の社会科レベルの話で恐縮ではあるのですが、ビジネスを単純化すると1:生産→2:仕入れ→3:加工→4:販売になります。マーケティング用語的にはバリューチェーンなどとも言われています。

ビジネスで競合に勝つためには、1・2・3・4のどこかで競合他社との競争優位性を設定していく必要があるのですが、その前に日本のマーケットが大きく縮小していることを確認する必要があります。

今までの日本は販売、つまり営業力で何とかなる市場が存在しました。そのため、そこそこの商品を営業力でなんとかするという戦略が可能でした。

しかし、日本の市場が減少していく中で競争優位性を営業力に求める戦略は非常に難しくなっています。

例えば、保険商品というのは統計情報を基に算出されるため、商品による差別化が非常に難しいです。そのため、本質的に営業担当者のスキルでの差別化が重要になります。結果的に、現在生き残っている保険マンの営業力はすさまじく高くなっています。

戦略自体に「良い」も「悪い」も存在しません、しかし、戦略は正しい認識で立てる必要があります。戦略を立てる際には正しくコストを見積もっておく必要があります。

プロダクト開発の会社であっても、そこそこの商品を営業力でナントカするという戦略自体は間違ってはいません。しかし、人事界隈で言うならば、無料の性格診断テストと同レベルのテストを高い値段で売っている会社は多数存在します。売れている以上、それは間違いではありません。しかし、その値段で売るためにはブランディング戦略や営業スキル向上に膨大なコストが必要になります。

しかし、「そこそこのプロダクトを営業力でなんとかする」という戦略は縮小する日本市場、貧しくなる日本市場という外部環境の変化を考慮する必要があります。

必要な営業力の見積りが甘い場合、戦略は失敗します。

縮小する日本市場においては、相対的に「放っておいても売れるプロダクトを作る」ことの成功率は上昇し、「そこそこの商品を営業力でゴリ押す」ことの成功率は低下しています。

日本は人材市場も縮小

前段は日本の販売の市場の話ですが、これは日本の人材市場でも同じことが言えます。

縮小する販売市場の中で営業力で生き残ろうとするならば優秀な営業担当者が必要です。しかし、営業担当者も技術者と同じで、そこそこの営業スキルは簡単に学べますが、他社と同じような商品を営業力で覆すレベルの営業担当者を育成するのは非常に困難です。そして、日本の人材市場も、その絶対数が減少していきます。

減少している以上、海外から呼ぶ必要がありますが、ここでどちらのハードルが高いか?ということを確認しておく必要があります。

すなわち、外国人の技術者と営業担当者です。語学のハードルの高さを考えると、営業担当の方がはるかにハードルが高いでしょう。

つまり、縮小する日本市場という外部環境を踏まえると、ハイレベルな技術者を海外から採用するという戦略の整合性は非常に高いと言えます。

ハイレベルエンジニアを採用する

ハイレベルなエンジニアを採用するという戦略は「そこそこの商品を営業力で売る」ではなく「ほっておいても売れるプロダクトを作る」という戦略思想が起点になっています。

前述の通り、ハイレベルエンジニアはスクーリングや座学で育てることができません。また、日本語ができるハイレベルエンジニアは、その絶対数が少ないため捜索が困難です。

そのために必要なのが採用に関しての日本語要件の撤廃です。なぜなら、ハイレベルなエンジニアスキルは効果的な習得が不可能ですが、日本語スキルは効果的に後付けで学ぶことができるからです。

日本語という極めてレアリティの高いスキルを求めることを止めて、世界中から広くスキル重視で採用することがハイレベルエンジニアを採用する上では絶対に必要です。

社内公用語の英語化とはちがうのか?

この戦略の際に、よく出てくる意見が、社内公用語の英語化です。

しかし、社内公用語の英語化は、そこに発生するコストをどのように競争優位性に変換していくか、という見積予測をしておく必要があります。

具体的には、日本にある会社が社内公用語を英語にするにはコストがかかります。しかし、アメリカやイギリスの会社はそのコストがかかりません。そのため、そのコストビハインドをどの様にして挽回するかの戦略を立てておく必要があります。

他の戦略立案とも同じですが、社内公用語を英語にするならば、ゼロコストでその戦略が実行できるアメリカやイギリスの会社に、どのように競争優位性を担保するか。ということを事前に検討しておく必要があります。

例えば、現実的には、営業部など日本語ネイティブが必要な部署もあります。社内公用語を英語にしてしまと、そこで働く人材が日本語と英語の両方ができる必要があります。これは採用プールがかなり狭まります。また、人間の学習リソースは有限なので、営業部人材に営業のノウハウではなく英語を優先させることに対する戦略的な合理性も必要になってくるでしょう。

採用プールが狭まることでの採用コストの増加、スキル向上の優先順位の変更といった要素を踏まえて、競争優位になるように戦略を立てる必要があります。

選ばれる会社になるにはどうする?

国内人材であっても、海外人材であってもビジネスである以上、全てはコストとリターンで考える必要があります。

人材戦略にとって、給与は非常に重要な要素ですが、結局のところ給与は標準化していきます。つまり、給与は差別化要因にはなりません。そして、その上で選ばれる企業になる必要があります。

※アメリカや中国の方が給与が高いのは年功序列・終身雇用・総合職正社員という日本の企業文化にもよっています。

ここで重要なのが、世界からの人材獲得競争という点で、日本という国には大きな優位性がいくつもあるということです。

必ずしもそうではないですが、日本は落とした財布が戻る国であり、女性が夜道を歩いても平気な国であり、暴徒のようなデモもありません。

もちろん、「働く」という点で、年功序列・終身雇用の弊害で、女性や若者にビハインドがある、ということはあるかもしれませんが、それは企業の問題であり社会の問題ではありません。

社会を「変える」ことは難しく時間がかかりますが、企業はすぐに「変わる」ことができます。

ダメなところを探すということはあまり好ましいことではありませんが、「働く」という点以外で、日本のダメなところを見つけることは難しいのではないでしょうか。

上級国民や利権政治家のような法の下の不平等というのはあるかもしれませんが、少なくとも選挙制度があるので、国民がそれを望まないならば、武力に依らずに変えることは可能でしょう。

日本市場が縮小していくという外部環境がある以上、人材の獲得競争から逃れることはできません。しかし、日本にはその競争にかつ十分なポテンシャルがあります。

そして、そのポテンシャルは企業が少し変わるだけで活かすことができます。これは非常に大きなチャンスです。

Last updated: 11月 1, 2019 at 22:45 pm

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